【寿司】コハダを酢で締める方法【出世魚】

職人の技術



悩む人
寿司屋でよく聞くコハダについて教えて下さい。
コハダの旬や特徴、酢締めの作り方何かも気になります。

こんにちは、ハマちゃんです。今日はコハダについての特徴と、簡単に酢締めのやり方を解説します。

ーこの記事を読むとわかる事ー
❶コハダの豆知識
❷コハダの生態・旬
❸コハダの締め方(酢締め)

【寿司】コハダを酢で締める方法【出世魚】

正式名称は“コノシロ”です。

寿司屋にとってコハダは酢で締める方法などがお店によって異なる為、お店の格や個性を表現できる要素の1つです。コハダが美味しいお店は流行ると言われている程、寿司屋の看板ダネです。

そんな寿司屋の真骨頂であるコハダがどんな環境で育ち、成長を遂げるのか。又どんな処理を経てお客様へと提供されているかを解説していきます。

コハダの豆知識

まずは簡単にコハダの雑学・豆知識をご紹介します。

コハダは出世魚

コハダは成長する段階で呼び名が変わっていく出世魚です。生魚はコノシロと言う魚で、コハダはコノシロの成長段階の個体をそうい呼びます。シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと呼び名が変わります。

寿司屋では幼魚のシンコ以外は、コハダと総称する事が多いです。

ー呼び名の変わり方ー
・シンコ – 4cm-5cmまでの幼魚
・コハダ – 7cm-10cmぐらいまで
・ナカズミ – 13cmぐらいまで
・コノシロ – 15cm以上

出世するごとに価値が下がる

コハダは特殊で、出世するごとに価値が減少してしまいます。

東京の寿司屋を中心に幼魚のシンコを初夏の風物詩として握りで提供する事が多いのですが、シンコはその時期ならではの個体である為、需要が高まり市場価格が高騰します。要は取り合いになるんです。

一方成魚のコノシロまでサイズが大きくなってしまうと、小骨が気になるようになる為、嫌われてしまいます。その為、大きくなればなるほど価値が下がってしまいます。

昔は嫌われ者。現代は縁起物。

庶民の魚としては大昔から活躍していたみたいですが、武士の間では嫌われていたようです。

ダジャレみたいなのですが、「コノシロを焼く」と「この城を焼く」が同じ音なので縁起が悪いと武士の間では食べる事が禁じられていたのです。

逆に現代では「出世しますように」と願掛けし、縁起物としてお正月などに食べられたりしています。

コハダの赤ちゃんは高級品

毎年、初物のシンコ(コハダの赤ちゃん)は㎏10万超えます。初夏にコハダの赤ちゃんであるシンコの漁獲が始まると、一気に需要が集中します。

下の写真のようにサイズによって提供方法が変わります。写真を見てもらうとわかるように、シンコは1貫に数匹のシンコを使用します。この1匹ごとに丁寧に捌く手間がかかる為、値段は高いは仕込みは大変だはで職人泣かせの寿司ダネの1つです。

コハダの生態・旬

生態と旬についてです。コハダは主にプランクトンや、小型の甲殻類などを食べ成長します。産卵期は初春から初夏までとされ、産んだ卵は数日で孵化しシンコとなります。

寿命は約3年と至って普通です。内湾の定着率が高く、コハダは群れで生息します。

関東以南から東シナ海、インドからポリネシア方面まで広く分布しています。朝鮮半島や台湾でも確認されており、大規模な回遊は行わず、一生を通して生息域を大きく変えることはありません。

個体の大きさによって使用用途が違う為、通年水揚げされ寿司屋を中心に消費されます。脂が乗る時期は産地にもよりますが秋から冬のコハダがよく肥えています。

特にその時期の佐賀県唐津で水揚げされる個体は非常に脂のノリが良いです。

コハダの締め方(酢締め)

ここからはあくまで個人的な処理の仕方ですが、参考までに簡単に解説します。

塩で締めて臭みを抜く

基本的に酢締めにする前に塩で締めます。目的としては塩味をつけると言うよりは、浸透圧を利用して脱水することです。そうすることによって臭みを取り除くことができます。

ーPOINTー
・脂のノリの見極め
・どのくらい酢で締めたいか
・自店のシャリに合わせた塩の当て方

※やり方はお店によって様々です

僕は真水にコハダをつけるのが嫌なので、真水で塩抜きをしなくてもいい程度に塩をあてます。サイズが小さい物や脂が乗っていない物は1分〜2分。脂が多い場合はその倍の時間で締めます。

下の写真ではコハダ自体の脂がそこそこあったので、この塩の当て方で4分です。

《塩を当てるまでの手順》

①水洗い(ウロコをとり頭と内臓を取り除く)

②1枚に開く

③中骨と腹骨をすきとる

④塩をあてる

塩分を馴染ませる

染み出してきた水分と表面の塩を洗い流します。この時に気をつけるのは、コハダの状態劣化を防ぐ為に冷たい水を使うことです。特に夏場なんかは水道の水がなま暖かったりしますので必ず冷たい水を使うことをオススメします。

だいたいこの後真水につけて塩抜きに入るのですが、僕はここで2.5〜3%ぐらいの海水に近い濃度の塩水を作り塩をあてた時間と同じ時間その塩水につけます。

こうすることで程よく馴染ませる程度に塩分を抜くことができます。

酢洗い後一晩寝かせる

その後生酢を使い、表面をサッと洗う程度にくぐらせます。

酢からザルにあげ、空気に触れないようにラップをかけて一晩寝かせます。こうすることで塩と酢がなじみやすくなります。

使う日に酢で締める

使用する日に再度酢でしめます。だいたい塩をあてた時間を目安に酢に浸します。

ここで使用するお酢も合わせ酢を使用するお店もありますし、生酢で締めるお店もあります。自店のシャリに合わせてどんなお酢で締めるか判断したり、酢を調合したりするのも職人の技術です。

合わせ酢とはお酢に調味料を入れ、軽く味のついたお酢の事を言います。

ー酢で骨を柔らかくするー
酢締めにすると骨が柔らかくなり、骨が気にならなくなる利点もあります。
特に大きいコハダになると小骨が気になる事もありますので、その点も踏まえて仕込みをするとより丁寧な仕事になります。

コハダを酢で締める方法 ーまとめー

ひと通りご紹介してみましたが、酢締めの方法は個性豊かで色々な方法があります。正解はありませんし、基本的に寿司屋では自店のシャリに合わせた仕込みをします。

シャリ自体の味がしっかりしているお店では、もっとしっかり塩を当てて、しっかり酢で締めて数日間寝かせたりもします。

ポイントは個体差を見極めることと自店のシャリを理解する事です。

簡単ではありましたが、コハダの解説を終わります。

では、また。