【簡単】カラスミの作り方や豆知識【寿司屋が解説】

職人の技術



悩む人
カラスミって珍味をこの前食べました。
カラスミって何から作られてるんですか?わかりやすく教えてください。

どうも、ハマちゃんです。今日はカラスミについて解説していきたいと思います。

ーこの記事を読むとわかる事ー
❶カラスミの正体
❷カラスミの豆知識
❸カラスミの作り方

【簡単】カラスミの作り方や豆知識【寿司屋が解説】

カラスミ自体は知っているけど「何をどうしたらあのカラスミになるのか。」

そんな疑問を持っている方もいるんではないでしょうか?今回はそんな方のために、カラスミの正体や豆知識をまとめて記事にしてみたいと思います。

ひとまず認識を合わせるためにカラスミの画像をお見せします。

通常飲食店等で提供されたものを食べる場合は、下の画像のように食べやすいようカットされた状態で提供されますが、本来のカラスミの形状は上の画像のような形をしています。

共通認識できたところで本題に入っていきます。

カラスミの正体

ずばり結論から言うとカラスミの正体は「ボラの卵巣」を加工して作られる食材です。

僕等のような寿司屋さんや、日本料理店ではこのボラの卵巣を生で仕入れて自家製のカラスミを作ってお客様に提供しています。

生のボラの卵巣を通称「ボラ子」と言います。

生のボラの卵巣=ボラ子

イメージしやすいように生のボラ子の画像をお見せします。

これが生のボラ子です。乾燥させて加工されているものと比べると、色が黄色いですが同じボラの卵巣。

加工が進んでいくとこの黄色い色が茶色っぽく変色していきます。

この画像は比較的綺麗ですが、写真をよく見てもらうと赤い血管が通っているのがわかると思います。その血管をどう取り除くかがカラスミ作りのポイントの一つです。

血を綺麗に取り除き、塩漬けにしてお酒などに漬け込んだのちに乾燥させたものがカラスミとなります。

ボラについて

この写真の魚がボラです。ボラ=美味しくない、臭いとネガティブな認識をされがちですが、獲れる場所によっては刺身で食べる地域もありますし、フライなどにすれば基本的に美味しく食べれます。

ちなみに僕は今大阪に住んでいますが、大阪の方のほとんどが「ボラ=臭い」の認識な気がします…

昔働いていた大分県の魚屋さんでは刺身用にボラの身を卸していた事もあるので、獲れる場所が良ければ刺身でも食べれますので一概には言えません。

ボラの豆知識

せっかくなのでボラについても少しだけ。

ボラは世界中の温帯、熱帯地域に広く分布する魚です。ブリやスズキ、寿司屋でいうとコハダなんかとも同じで、成長につれ呼び名が変わっていきます。いわゆる「出世魚」です。

●2〜3㎝の稚魚ー「ハク」 ●5〜6㎝の幼魚ー「オボコ」

●20〜30㎝の成魚ー「イナ」 ●30㎝以上ー「ボラ」

●老成魚ー「トド」…ボラはまれに80cm〜1m近くに達することもあります。ここまでいくと「トド」と呼びます。「結局」「行き着くところ」といった意味で用いられる「とどのつまり」という例えは動物の「トド」ではなく、ボラの行き着くところの「トド」からきているんです。

またボラは非常に生命力の強い魚なので多少水質が悪くても生き延びる事ができます。産地によって「臭い」と嫌われるのも水質汚染にも耐えうる生命力があるからなのです。

カラスミの豆知識

カラスミの正体がわかったところでカラスミについての豆知識を少しだけ。

天下の三珍味

日本では江戸時代から、ウニやコノワタとともに「天下の三珍味」と呼ばれています。

「肥前国のカラスミ」ー今の長崎県・佐賀県、

「越前国のウニ」ー今の福井県

「三河国のコノワタ」ー今の愛知県

今でも語り継がれる程、古くから日本で愛されてきた食材なのがわかりますね。

カラスミの語源

カラスミを漢字に直すと「唐墨」と書きます。

カラスミの形が中国・唐からやってきた墨「唐墨」に似ている事からそう呼ばれ始めたと言われています。当時の保存方法は常温保存であった為、時間が立つと真っ黒になっていた事から色も形も「唐墨」にそっくりだったそうです。

また肥前名護屋城(今の佐賀県)にいた豊臣秀吉にその土地の食品として献上した際に、急にその名を聞かれ慌てた代官がとっさに「唐墨です」と答えた為「カラスミ」になったという説もあります。

世界のカラスミ

カラスミは日本以外でも世界各地で製造されております。

特に有名なのは台湾や、イタリアのサルデーニャ島などです。中でも台湾はカラスミ大国で値段も日本で買う1/3ほどで買える為、台湾土産としても人気がありますね。

台湾語で烏魚子(ウーユイツー)、イタリア語ではボッタルガ、フランス標準語ではブタルグ、英語ではボターゴと呼ばれ世界各地で親しまれています。

日本ではボラ子を使ったカラスミが一般的ですが、世界ではクロマグロの卵巣を使用したものや、メカジキの卵巣を使った製品もあるようです。イタリア語ではこれらが分類されており、ボラのものを「ボッタルガ・ディ・ムジーネ」、マグロのものを「ボッタルガ・ディ・トンノ 」と呼ばれています。

カラスミの作り方

ここからは自己流ではありますが、カラスミの作り方を解説していきます。

作り方は本当にいろんなやり方があり作る人によって違ってきますが、作る人によって色んなアレンジがあるのもカラスミ作りの面白いところです!

ボラ子の卵巣は左右2つの対で、1腹(ひとはら)です。

先にお見せした写真のようにボラの身の一部がついたまま繋がっていますので、そのまま乾燥が終わるまでは繋げたまま残しておきます。

血抜き

 1)先ず、ボラ子の血抜きからはじめます。

この作業が面倒ではありますが、ここでいかに丁寧に血抜きを行うかでカラスミの出来も変わってくる重要な工程です。

ボラ子の中心に太い血管があります。その血管に針などをさして穴を開け指の腹や、針を寝かして動かし、血を押し出していきます。この時に太い血管から薄皮のほうに続く、細い血管の血も出来るだけ取り除いてください。

この細い血管にも針を刺してあげると血が抜けやすいですが、薄皮を破いてしまうこともあるので注意が必要です。流水にあてながらやるとよいでしょう。

いかに薄皮を傷つけず、綺麗に血を抜くかが ポイントです。

塩漬け

 2)血抜きが完了したら、次に塩漬けの工程に入ります。

ボラ子全体にたっぷり塩をまぶしつけて(ベタ塩)、ザルやバットに並べて冷蔵庫で保管いきます。

かなり水が出てきますので定期的に観察して水が溜まってきたら水を捨ててください。たくさんの塩で覆っていても塩が吸い取れないくらい水が出てきます。塩が水を吸っていても気になる場合は、新しい塩を当て直すと良いでしょう。

味付けはもちろん、この時出てくる水と一緒に臭みを抜くことも塩漬けの目的のひとつです。

塩漬けの期間は人それぞれですが、カラスミの状態でコントロールします。塩気が弱すぎると日持ちの面ではよくありませんが、どの程度の塩分濃度で仕上げたいかも加味すると良いでしょう。

僕は様子を見ながら5日から1週間塩漬けします。日に日にカラスミから水分が抜けて、塩の塩分によりしまってきます。様子を見ながらカチカチになるまで続けますが、塩気が入りすぎるので1週間以上塩漬けする事はお勧めしません。

塩抜き(焼酎漬け込み)

 3)次は塩漬けした期間と同じ時間の塩ぬきをします。この時に大体の職人さんはお酒を使って行いますが、僕はここで芋焼酎を使って塩抜きと一緒に香り付けを行います。カラスミには芋の香りがよく合いますし、カビなどによる劣化対策にもなります。

まず冷蔵庫から出したボラ子に残っている塩を焼酎で洗い流してください。

塩をしっかり洗い流したら深い容器に並べ、ボラ子が浸るぐらいまで焼酎を入れて再び冷蔵庫で1週間保管します。途中で様子を見て上下をひっくり返してあげましょう。焼酎が全体によくまわります。

また浸している焼酎が途中で濁ってくる場合があるので、その時は新しい焼酎に漬けなおします。

乾燥(冷蔵庫干し)

 4)焼酎の漬け込みが終わったら干す作業に入ります。ここでどのくらいの期間干すのかも、作る人の好みで、意見の分かれるところでもあります。多めに仕込まれるなら色々干し方を変えて作ってみて、好きな干し具合を見つけると良いでしょう。

僕は割としっかり干していきます。干す期間は通常は天日で1週間程干しますが、害虫がよってきたり、ボラ子の変化が激しいので管理がしにくいです。

その為、僕は干し始めは冷蔵庫の中でゆっくり干していきます。

焼酎をよく拭き取り、網目のバットに並べて冷蔵庫で干します。毎日ボラ子の状態を観察し、状態をみてボラ子の筋が真っ直ぐになるように整形してください。バットの接地面の乾燥が遅いので、できれば半日に1回、最低でも1日おきにひっくり返します。

乾燥(常温干し)

 5)表面がしっかり乾いてきたら、いよいよ外干しにかかります。この時も天日干しできると良いですが、管理が難しいので室内常温干しで大丈夫です。(※少しでも天日干しできるならする方が良い)

この時表面に酒や焼酎を霧吹きで吹きかけながら乾燥させると表面の皮にカビが生えたり、塩い粉のようなものがふいてくるのを防げます。

全体で大体2週間くらい干せばいい具合の状態に仕上がってきます。

ここまで干せばあとは好みの干し具合まで乾燥させて食べるだけです。

保管方法

基本的には日持ちするものではありますが、長く日持ちさせたい場合は真空パックに入れて空気を十分に抜き、冷凍保存をお勧めします。

数週間のうちに食べてしまうのであれば冷蔵保存でも問題ないでしょう。

【簡単】カラスミの作り方や豆知識【寿司屋が解説】:まとめ

今回はカラスミという珍味とそれに付随する豆知識と作り方を解説してみました。

「生のボラ子」さえ手に入れば高級珍味をご自宅で作ることも可能です。ぜひ、ボラ子を求めて魚屋さんに問い合わせして自家製カラスミを作ってみてくださいね。

では、今回はこの辺で。