寿司屋のシャリの重要性を解説【わかりやすい】

職人の技術



どうも、ハマちゃんです。今日は寿司の命とも言われる「シャリ」について解説していこうと思います。

ーこの記事を読むとわかる事ー
❶シャリの重要性
❷シャリの役割
❸シャリの特徴について

寿司屋のシャリの重要性を解説【わかりやすい】

シャリについて解説しますが、結論から言うとシャリは十人十色。

つまり正解はなく、各店シャリへの思いやプロセスは様々でどんなシャリで寿司を握るかは自由です。

  • 親方からの教えを忠実に守ったシャリ
  • 地方の想いを表現したシャリ
  • 自分の好みを表現しているシャリ
  • 魚の邪魔をしないシャリ
  • 魚を引き立てるシャリ
  • 甘いシャリ、しょっぱいシャリ
  • 硬いシャリ、柔らかいシャリ
  • 白酢のシャリ・赤酢のシャリ
  • 温かいシャリ、冷たいシャリ

色んなシャリがあるからこそ、寿司は面白く深いな〜とつくづく思います。同じ寿司ダネを食べたとしても、シャリが違えば口の中での味の感じ方は全く違う物になります。

寿司職人として毎日ご飯を炊き、お酢を合わせ、シャリを作っていますが、今だに微妙な変化に迷わされることは多々あります。

気候、お米の扱い、お米の寝かし具合、精米具合、お米の種類、水分量、一度に炊くお米の量、水の含ませ方、お米の研ぎ方、浸水時間、蒸らし時間、炊き方、熱源の種類、お酢の寝かし具合、シャリ酢の配合…

色んな要素が複雑に絡み合うからこそ、難しく悩ましい問題ではありますが、その都度、発見があり、自分の成長もあります。

シャリの重要性

「寿司はシャリが命」って言うけど…

いまいちピンと来ない。

そんなに違いわからないんじゃないか。

と思われている方も多いのではないかと思います。正直僕も寿司職人になる前は、シャリによる違いを感じようとも思いませんでしたし、感じたこともありませんでした。

しかし、寿司職人になり色んな寿司を食べに行く中で、シャリによる味の感じ方が全く違うことに気づきました。「美味さ」のレベルに差があったのです。

今の世の中まずいと思うような寿司屋(チェーン店除く)はほとんどありません。そんな中でも、印象に残る寿司屋さんの美味しさは、「わかりやすい美味しさ」があります。

そのわかりやすい美味しさを生み出すのが「シャリの存在」なのだと僕は思っています。

わかりやすい美味しさ

わかりやすい美味しさって何。ですよね。

簡単に表現するなら、お寿司を口に入れて食べた瞬間に出る自然な言葉や表情。

その自然に出る表情や言葉が、「美味しいね。」なのか「うまっ!!!!」なのか。言葉がでないのか。思わず出ちゃう一言ってありますよね。あの感覚が出ちゃう美味しさは、「わかりやすい美味しさ」なんです。僕の中で。

あのわかりやすさって、単に新鮮な魚や、刺身を食べた時にはない感覚なんです。どう言うことかと言うと、魚の旨味や、甘み、香りなどをシャリの酸味や塩味・コク・甘みなどが複雑にすることによって生まれる「美味しさ」なんだと思っています。

要は、寿司1貫で料理が完成しちゃってるような物なんです。

シャリの役割

シャリの役割をわかりやすく解説するとこうです。

シャリは調味料

「シャリは調味料」これは僕の師匠から学んだ言葉なのですが、本当にわかりやすいシャリの解釈の仕方だと思います。

素材だけの旨味を味わう物もありますが…料理を作る上で調味料なくして美味しい料理を作ることはできません。色んな調味料をバランスよく配合し、素材の旨味と合わせることで初めて美味しい料理になります。

寿司においてその役割の一部を果たすのが「シャリ」の存在です。

シャリは美味しくなくていい

シャリは調味料という解釈で行けば、シャリだけの美味しさは追求するべきではないと僕は思っています。なぜなら、シャリだけ食べて美味しい必要がないからです。

よく「シャリが美味しい」と言っていただけることがあり、もちろんお褒めの言葉はなんでも嬉しいのですが、それは寿司ダネと合わせたシャリが美味しいのであって、シャリ自体が美味しいわけではありません。

シャリだけを食べることは寿司屋ではあり得ませんし、お客様にシャリを食べさせて「どうだ、シャリがうまいだろ?」と自慢してくるような店は自己満足の押し付け以外の何者でもない。と思っています。

もちろん寿司を食べてシャリが美味しい。と感じるシャリもありますし、そうであってもいいと思いますが、僕の思うシャリの役割は「名脇役」。

寿司ダネを引き立ててなんぼのポジション。出しゃばりすぎてもダメなんです。

シャリの特徴

一言でシャリと言えど、シャリにも色んな特徴があります。

白シャリと赤シャリ

お寿司には大きく分けて2種類のシャリがあります。

米酢をメインにつかった白シャリと、赤酢という酒粕を原料に作られたお酢を用いて作られる赤シャリです。

使用するお酢の特徴に合わせて、調味料を配合しシャリ用の合わせ酢(シャリ酢)にするので、どんなお酢を使うかはとても大事になってきます。お酢の特徴によって、その特徴に合う魚種なども変わってきます。

白シャリと赤シャリの違いについては別記事でまとめてますので、気になる方は読んでみてください。

この記事での説明は省略します。

固いか。柔らかいか。

美味しい白米の特徴の一つに「粘り」がよく上がりますが、お寿司に用いるシャリにおいて粘りは必要ありません。理由はご飯粒同士がほぐれ、寿司ダネと一緒になくなるのが寿司の特徴だからです。

白米は粘りがあった方が美味しいのですが、シャリに粘りは厳禁です。

おそらくどんな店舗においても粘りを抑える工夫がなされています。そう考えると固く炊くべきか、柔らかく炊くべきかはわかりやすくなります。

シャリは基本的に固めに炊きます。どのくらい固く炊くかは職人によりけりですが、シャリ酢を加えて混ぜますし、通常の白米よりもやや固いくらいがちょうど良いと言われます。

砂糖を入れるか否か。

もう一つの大きな違いの特徴の一つに「砂糖を入れる量」があります。

前述した赤酢を使用する場合には、砂糖を用いないことが多いです。それはもともと赤酢自体がまろやかでコクがあるからです。

逆に米酢を使用する場合、お酢自体の甘みは強いのですが、酸味の角がある(シャープすぎる)為砂糖を入れてまろやかに仕上げることが多いです。

あとは、砂糖の甘みだけでなく「保湿性質」や「浸透性質」をシャリに用いています。砂糖を入れていないシャリ酢を使用するお店のシャリはベタつきにくいですが、その分シャリの保湿力が弱い為、温度が下がるとパサつきの原因となります。

保湿性質ー保水力による離水防止、老化防止、澱粉食品の柔らかさを保つ効果がある。
浸透性質ー組織への浸透、水分活性低下、腐敗を防ぐ(水分活性が低い程、微生物が繁殖しにくい)

文化の違い

握りの文化である江戸前寿司はその場で食べるのが基本。しかし、大阪寿司は箱寿司や棒鮨、バッテラなどの「持ち帰り寿司」が基本です。

砂糖の保湿力によって水分がしっかり中に閉じ込められているので、時間が経っても美味しくいただけるように仕上げているのが大阪寿司ならではです。この味が大阪で長く愛されてきたので、にぎり寿司にも砂糖を使う店が少なくありません。

今でこそ、日本各地に江戸前寿司の文化が広がっていますが、こういった文化の違いでのシャリの違いもあります。

寿司屋のシャリの重要性を解説【わかりやすい】-まとめ

色んな要素が混ざり合う「寿司屋のシャリ」

寿司屋がある分、それだけの店オリジナルのシャリが世の中にはたくさんあります。そのお店のシャリにどんなこだわりがあり、どんな役割をシャリが担っているのか。など、考えると永遠に答えはありませんが、その可能性が面白いですよね。

ぜひ、お寿司を食べた際に「わかりやすい美味しさ」を感じた時は、「シャリの役割」を大将に聞いてみてください。そのお店の「こだわり」がそこに隠されていると思います。

では、この辺りで。