元祖トロたくはどこ?美味しい作り方【寿司屋が解説】

職人の技術



どうも、ハマちゃんです。今日はトロたくについて解説します。

元祖トロたくはどこ?美味しい作り方【寿司屋が解説】

「トロたく」を寿司屋さんで食べた事がない人に向けて簡単にトロたくについて説明すると、「マグロのトロ」を包丁で叩いたものと「たくあん」を刻んだものをあわせて作るマグロの寿司ダネの1種です。

僕が働くお店でもコースの最後の細巻で、必ずお出しするハマる人続出の寿司ダネです。昔はネギトロ(骨の周りのマグロの身をネギとったものと、野菜のネギを合わせて作る寿司ダネ)が主流でしたが、今の主流は「トロたく」と言っても過言ではないほど、多くの寿司屋が扱っています。

そんな「トロたく」がどこで生まれて、どう広まったのか。など普通はなかなか考えもしないような視点で「トロたく」に迫ってみたいと思います。

ーこの記事を読むとわかる事ー
❶トロたく発祥の地はどこ?
❷美味しいトロたくを作る為に重要な事

トロたく発祥の地はどこ?

まず僕もずっと気になっていた「トロたく」の発祥地についてです。

これはなかなか難しい問題というか、確実にここが発祥だ!とは言い切れないのですが、僕が調べていく中で3店舗ほど「元祖トロたく」の呼び声高い店を見つけました。

新潟前すし処 大寿司(新潟県)

1店舗目が新潟は南魚沼郡湯沢町にある「新潟前すし処 大寿司」さんです。

https://twitter.com/rj8NV2MYn5uMlVN/status/1078641648697921536

こちらは現在の店主さんが自らのブログでずっと昔から「トロたく」をやっていた事の証拠を見せているほど「元祖トロたく」に自信を持っておられます。

操業は1950年(昭和25年)、旧湯沢村に創業との事です。今から70年も前からお店を続けておられます。

その店主さんのブログで書かれている証拠というのが、当時発行されていた「すし雑誌」という日本初の寿司の雑誌です。なんとその第3号に「全国の変わった寿司のコーナー」の中で大寿司さんの「トロたく」が紹介されているのです。

創刊が昭和47年11月で、第3号の発行が昭和49年10月(1974年)だとのことです。

この雑誌で紹介される頃には大寿司さんの看板メニューとして確立されていた(発行の2年前)とのことなので、最初に「トロたく」をやったのは1974年より前ということになりますね!

これは貴重な情報であり、証拠になり得ます!

鮨ふるかわ 麻布霞町(東京都)

2店舗目が東京都港区西麻布に店を構える「鮨ふるかわ」さんです。

「鮨ふるかわ」の店主である古川廣次さんが、西麻布に店を構える前の六本木で店長を務めていた時代に発案したとの情報がありました。

「鮨ふるかわ」さんのHPにお邪魔してみると、古川さんのご挨拶と共に生年月日が記載されており、修行歴や寿司と共に人生を歩んできたその想いなどを拝見できました。

トロたくの発祥地であるか否か。そのHP上にある修業歴などをもとに考察してみます。

古川さんは銀座で20年ほど修行し、六本木で店長を13年勤めた後に、六本木に店を構えられたそうです。さらにその後に、今の西麻布に移られたようです。10代から鮨屋に入り、この道50年以上。他の職業に就いたことは一度もなく、鮨職人一筋だそうです!

古川さんも限りなく「元祖トロたく」に近い存在ではないかと思われます。

すし善 すすきの店(北海道)

3店舗目は北海道に4店舗、東京銀座に1店舗を展開する「すし善」の創業店舗である「すし善 すすきの店」さんです。

https://twitter.com/6002akapoon/status/1083000966096384001

「すし善」の創業者であり、店主である鳩宮勤さんが「すし善 すすきの店」を構えたのが昭和46年の6月。

生の握りだけでなく北海道の最高の食材を活かした江戸前寿司を北海道の方々に味わっていただきたいという想いから「すすきのの地」で開業されたとのこと。

『仕事に対する愛情を一つひとつの寿司に込めて提供する。』何より「来てよかった」と思っていただきたい。この寿司職人の本質を操業当時からずっと守ってこられたお店です。

3店舗の比較

上記の情報をもとに「元祖トロたく」はどこか。

結論から言うと僕は「大寿司」さんが「元祖トロたく」ではないかと考えました。

勝ってに考察しました。その比較・考察した内容を綴っていきますね。

まず「大寿司」さん。

雑誌掲載されている為、決定的な証拠もあり。確実に雑誌掲載の1974年より前から「トロたく」を提供されてます。

次に「鮨ふるかわ」店主の古川さん。

生年月日が1951年の生まれであることがわかっており、10代から寿司に携わっておられますが、大寿司さんが「トロたく」を提供されていた1974年に古川さんは23歳。

銀座で10年修業をされたとの事でしたので、もしこの歳で六本木で「トロたく」を提供していたとなると、修業を始めたのが13歳くらいからということになります。。

少し現実的ではないな〜と思います。昔ならあり得るのかなと思いますが、13歳て中学1年生の年齢ですもんね。少し厳しいかな〜^^;

最後に「すし善」店主の鳩さん。

開業が昭和46年との事でしたので西暦で言うと1971年。

お!!!大寿司さんの雑誌の掲載年1974年より前に開業はされています。ただ…開業当時から「トロたく」を提供していたかどうかはわかりません。。。

このあたりの情報を整理し、確実に1974年にはトロたくを提供しており、そしてその「トロたく」が看板メニューとして雑誌に掲載されている「大寿司」さんが「元祖トロたく」ではないかと僕は考えました。

何か他に貴重な情報があれば、ぜひコメントをください!!!!

そして、長年美味しいお寿司を提供するために試行錯誤され、新しい文化を生み出し続けてきた上記3店舗にスペシャルリスペクトです。必ず3店舗ともお寿司を食べに伺います!若造が勝ってな考察失礼しました。

美味しいトロたくの自論

ここからは美味しいトロたくの自論を語らせてください。

「持論」と言う字を使うと長年ずっとそう考えてきたみたいでウソになるので、あえて「自論」と書きます。

僕は直近の2年間、営業のある日は毎日トロたくを提供しているのですが、その中で色んな考えを試してきました。その中で今の自論に至っています。これからもっと変化するはずです。だからこそ「持論」じゃなく、「自論」として書かせてください。

一言で「トロたく」と言っても、トロとたくあんの比率はどうで、どのくらいのシャリの量で、他に薬味を入れるのか。わさびは入れるのか。どんな海苔を使うのか。巻き加減はどのくらいで。醤油はどのくらい塗るか。

使うトロの味、脂の甘みがどうか。脂の量の調整は必要か。巻く時のマグロの温度。たくあんの刻み方はどうするか。千切りなのか細かく刻むのか。など色々考えなくてはいけません。

そんな中でも僕が最も大切にしている事はシャリとネタのバランスです。

重要ポイント①

最重要ポイントとして僕が考えるのが、シャリの量に対するタネの量です。

ただ…ここで難しいのが一言でシャリと言っても色んなタイプのシャリがあります。だからこそ、そのシャリに合わせた薬味の使い方や、量を計算しなければ最高に美味しいトロたくにはなりません。

大前提として「自店のシャリを理解」した上での試行錯誤が必要です。

したの記事では寿司屋のシャリの重要性などについてまとめています。ぜひ参考にしてください。

ちなみに僕が使うシャリの特徴は、米の粒がでかい、赤酢メインのブレンド、酸味がたつ、塩気がたつ、砂糖未使用(甘くない)、極端にイメージしやすくすると酸っぱい塩っぱい梅干し…笑

少し極端に言いすぎました…梅干しほどクセはないですが、お米の甘みもそれほど感じない、シャリだけで食べても美味しくないシャリです。

話を戻します。

よく見るトロたくや、ネギトロと言った寿司ダネの細巻きの画像がこちら。

これは僕からすると、「ただ巻いてる」だけ。何も美味しくするための計算がされていません。

僕が巻いたトロたくの写真がこちら。

明らかに違う点が3点あります。①シャリの量 ②タネの量 ③たくあんの形状

もちろんこれら全てに意味があります。

まずなぜこんなにシャリを少なくするのか。それは前述したように自分が使うシャリは、酸味と塩味のパンチが少し強めなんですね。それを理解せずに最初の画像のように巻いてしまうと、シャリの主張が強すぎてしまうんです。

そして、タネの量。このパンチあるシャリに対して甘味の強いマグロのトロを合わせているわけで、シャリの主張がですぎず、隠れすぎずを考えた時。このくらい入れてちょうどいいな。と瞬時に判断します。

それにしても、トロが多すぎるんじゃないかと思われるかもしれません。ただこのトロの量にしている理由がもう一つあって、それは「たくあんの塩分」も加わる事。ここを考えずにトロたくを作ってしまうと、たくあん臭いトロたくになってしまいます。

最後にたくあんの形状。僕は細かく叩いています。こうするのにも理由があり、たくあんの特徴としてもう一つあげられるのが、「食感」です。カリッとしてます。この「カリッ」とした食感がありすぎても、何を食べてるのかわからなくなります。

あくまでメインはトロなのに、たくあんが主張しすぎるとたくあん食べてるみたいな感覚になってしまいます。僕だけかな…笑

味のバランス

要するに味のバランスがかなり重要になってきます!!

「シャリの酸味+トロの甘み+たくあんの塩味・食感」ここに海苔の香りであったり、ゴマやわさびと言った薬味の香りが加わり、トロたくと言う一つの料理が完成するわけです。

重要ポイント②

もう一つ。しっかりセレクトしないといけないのが「たくあん」

結論から言うと「水分量が少なく、甘みが少ない古漬けタイプ」が合います。

たくあんもなんでもいいわけではありません。正直このセレクトを間違えると何をしても美味しくなりません。僕も一度自宅でトロたくをやった際に妥協してコンビニのたくあんを使用した事があります。

何が違うのかを考えるきっかけになったので結果オーライなんですが、ほんとに美味しくない。

ビックリしました。大きな違いは2つ。

まず一つはたくあんの水分量。たくあんの中には水々しい水分を多く含んだものと、時間をかけてゆっくり水分を飛ばした古漬けタイプの物があります。間違いなく水分の飛んだ古漬けタイプのたくあんが合います。

マグロも同じで、マグロの美味しさの重要項目の一つに水分量があります。基本的にドリップと呼ばれる水分を多く含んだマグロは美味しくありません。そしてマグロの身は水分を嫌います。身の水分量が多かったり、合わせる物の水分が多いと、すぐに身の色が変色し、臭みが出てきます。

ちなみにマグロについても記事にしていますので、参考にしてください。

そして二つ目が、たくあん自体の甘味が少ない事。

せっかくのマグロの甘みがボケてしまいます。たくあんの甘みは必要ないです。

その他のポイント

その他にも前述したような細かなこだわりが各店舗にあると思います。

巻物ではなく、握りとして提供しているお店もあったり、手巻きで出したり様々です。どんな提供方法であっても美味しければいいわけです。美味しい物には必ず理由があります。

あくまで、僕の自論としていくつか最も重要と考えるポイントを上げてみました。

元祖トロたくはどこ?美味しい作り方【寿司屋が解説】

僕の考える元祖トロたくや、美味しいトロたくについてまとめてみました。

何か聞いてみたいことや、気になることなど。あれば遠慮なく繋がってくださいね!!

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